スマートワーク導入支援事業「特定非営利活動法人世代間交流サロン・オアシス」
「活力(誰もが活躍できること)と理性(差別・偏見などがないこと)のある地域社会を実現する」
就労継続支援A型である、障がいのある方の就労を支援する事業を経営しています。特に8時間勤務などの通常の事業所に雇用されることが困難な方と雇用契約を結び、就労の機会の提供と必要な訓練等の支援を行っております。
働き方改革における現状の課題
- 毎日々、コロナで頭が一杯
障害で多くの薬を常用している方がいる。その副作用で、一般的な方より確実に免疫力が落ちている。今のコロナ禍で、事業所に通所すること自体が大変なリスクとなっている。
- 障がい症状に合わせた、多様な働き方が必要
当所で働く多くの方が、精神的な疾患を抱えております。そのため、仕事に関する意識が高いものの、職場の変化、仕事の変化、体調の波によって、簡単に仕事を休んだり、辞めたりする傾向があります。
- 電話で、突然休むので、納期がある仕事を請けれない
当事業所には〝気象病”の方も働いている。つまり、気圧の低い日などは、事業所を休む方が多い。低気圧がくると(天気が悪くなると頭痛や倦怠感、うつ傾向などの症状を訴える方がいます。詳しいメカニズムは、分かってないところもあるそうですが、自律神経失調が原因ではないかと言われています。)日内変動があり、働ける時間を選ぶことが出来れば、仕事がしたい方がいます。
- 症状に合わせた、多様な働き方が必要になってくる
内部障がい(人工透析)の方は、週数回、半日通院が必要になります。精神障がいには、対人障がいの方も多く、適応障害や対人恐怖症、自律症スペクトラム、被害妄想など、事業所で作業することが困難な方もいます。
スマートワーク導入に向けた取り組み
- 働きやすい職場づくりのために①
新しい働き方を模索し、テレワークや在宅勤務の環境づくりを始めました。
当所の作業で出来るものは、自宅でもPCを使用して作業できるような作業にする。(プリントアウトデータやメールデータを共有ドライブ利用しデータ共有を行うなど)
労働人口の減少による職員、A型利用者の減少
新型コロナウイルス感染症の感染拡大
従来の印刷業務からの作業内容の変化
障がい福祉分野についても在宅勤務の推進
職員の変化する労働ニーズ(副業、介護・育児、働くことの価値観の変化)
A型を利用される方の体調変化
A型を利用される方の通勤手段
- 働きやすい職場づくりに取り組む②
テレワーク等に合わせて、フレックスタイム制導入が必要になりました。
職員は、コアタイムを12時から16時(4時間を)含む所定労働時間を7時間
A型利用者は、コアタイムを13時から16時(3時間を)を含む所定労働時間を4時間以上
※所定労働時間を短縮することで、A型利用者の方についても、社会保険への加入のハードルが低くなる。
現在は、職員は9時から18時まで勤務(8時間労働)
A型利用者10時から16時まで勤務(内労働時間は4時間半労働)
※12時00分から13時00分は休憩
- 働きやすい職場づくりに取り組む③
マネジメント研修も実施します。外部専門家と連携し、法令研修やマネジメント、メンタルヘルスなどの研修を実施し、福祉としての専門性と、適切な事業所運営が可能な組織力の強化を図ってきまます。
今までは、マネジメントや生産性向上よりも、福祉的支援を重視した研修や社内勉強会を実施しており、基本的労働関係法令などに関する知識などがない事業であった。
企業としての目標
福祉で在宅勤務やテレワークなんて無理と思われているが、先ず、工夫をすることから始める。先ず工夫としては、出勤する日、在宅勤務の日を分けて始めれば、福祉の世界でも可能になる。
- 更に、使えるテレワークの推進
フレックスタイム制と在宅勤務を拡充する
職員については、週に2日のテレワークの日の恒常化を図る
⇒最終的には、月の半分をテレワークに
- 仕上げは、労働時間の短縮
フレックスタイム制と所定労働時間の削減を通じて働きやすい環境の実現へ
- 雇用促進と生産性向上に取り組み有給休暇を増やす
タスク管理とフレックスタイム制の導入による仕事の見える化、給与計算等の電子化を行うことで、有給取得しやすい環境とする
実際に行った取り組み
- タブレット端末の整備
- テレワークシステムの導入
- 働き方改革(フレックスタイム制、在宅勤務制度の導入)
- 従業員(A型利用者、職員)への研修
職場環境や働き方の変化
①タブレット端末の整備
タブレット端末を整備することで、1人1台、端末を持つことができました。合わせて、以前はそれぞれのパソコン上のソフトを利用して作業をしていたものをクラウド型のオフィスソフトに変更を実施したことで、特定のパソコンでないと作業できないものが無くなり、タブレット端末とパソコンを2つ使うことでリモートでの打ち合わせや会議を行いながら、作業をすることができるようになりました。
②テレワーク率の増加
本事業を実施する前は、テレワーク・在宅勤務者については、週に2日ほど特定の従業員が対象でした。しかし、①のタブレット端末の整備と合わせて、リモートでの打ち合わせができるようになり、在宅勤務を行うことができる従業員が増加しました。実績としては、最も多い週では、従業員の6名が在宅勤務を実施でき、月間の延べ在宅勤務者数は100人を超える月もありました。
③働き方改革
フレックスタイム制の導入を行い、コアタイムとフレキシブルタイムに分けて事業所の職員の勤務時間の変更を実施しました。事業所としての人員配置基準等が障害福祉サービスを実施している弊社にはあり、コアタイムとしては、サービス提供時間を設定、営業時間中については、管理者やサービス管理責任者は必ず配置することで、その他の職種の従業員については、早出、遅出を可能としました。A型利用者についても試験的にフレックスタイム制を導入していますが、出勤時間の変更等により生活リズムを崩し、出勤日数が減少するケースがあるなど、まだまだ課題が多く、今後も見直しながら全面実施に向けて取り組んでいきます。
④研修の実施
在宅勤務やクラウド上でのパソコン作業を実施していくために、職員、A型利用者に対して研修を実施しました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大が落ち着かない中で、全員集まっての研修実施とはなりませんでしたが、情報セキュリティやフォルダー、ファイル名、保存方法など基本的な事項の確認と情報保護のためには基本的なことの徹底が大切であると学びました。
経営者や管理職の心理的変化
テレワークの導入なんて、自分には関係ないものだと思っていたが、少しずつ取り組みをしていくと事業所内の空気が変化していくことを肌で感じました。どうせ上手くいかないのではないか、難しいのではないかと思っていましたが、従業員が少しずつパソコンやタブレットの操作ができるようになり、リモートでの会議や朝礼が当たり前に行われるようになりました。今では、リモートでの会議や朝礼が無くなることは考えられません。もっと活用できることもあり、そして、上手くいっていない部分もありますが、初めの一歩を踏み出すことを応援していただいたこの機会に感謝しています。(担当理事・所長)
従業員の心理的変化
テレワークやフレックスタイム、在宅勤務なんて、福祉には関係ないものだと思っていました。そして、実際に取り組み内容を説明してもらったときも、テレビなどのマスメディアで報じられるテレワークと違うのではないかとはじめ思いました。しかし、タブレットが増えて、リモートでの会議や打ち合わせを日常的に行うようになり、在宅就労をしている利用者さんへの訪問とリモートでの打ち合わせを行っていくなかで、福祉だから関係ないのではなく、やり方や見方を変えることが大切なのではと気づくことができました。まだ活用できそうな場面もあり、もっと私たちの働き方を変えることができると思いますが、私、個人のパソコンの知識や操作が不慣れなところもありますが、決してできないことではないと思うことができました。私たちは、福祉の専門職として、利用者の方のできないことを何とかできることに変えるための支援を行っています。自分のできないことも何とかできるように、このICTやIoTの時代に流れに逃げずに、できるようになりたいと思うきっかけとなりました。(50代・職員)
特定非営利活動法人世代間交流サロン・オアシス
設立 | 平成21年7月 |
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事業内容 | 保健・医療・福祉/まちづくり/子どもの健全育成/連絡・助言・援助 |
本社所在地 | 石川県金沢市みどり2丁目6番地5 |
従業員数 | 18名 |